自己破産をすると、裁判所が破産手続きを開始し、債務の免除を判断します。このとき、破産手続きの進め方には「同時廃止」と「管財事件」の2種類があります。
同時廃止事件では、破産手続きにおいて配当すべき財産の少なさから、破産手続きを開始すると同時に破産自体を終了させるという意味で、「同時廃止」といいます。
これに対して、「破産管財事件」とは、会社や法人の代表者、個人事業主、サラリーマン等給与所得者であるが20万円以上の財産がある人を対象とする破産手続きをいいます。管財事件とは、自己破産の手続きのうち、裁判所が破産管財人を選任し、財産の調査や処分を行う手続きのことです。
管財事件には、破産手続きの途中で「異時廃止(いじはいし)」となるケースがあります。異時廃止とは、破産手続き開始決定後に破産財団(債務者の財産)が不足し、破産手続きの続行が困難と判断された場合に、手続きを途中で終了することを指します。破産管財事件では、破産手続きにおいて配当すべき財産があるかないかについて調査をしたうえで、配当のあるなしに関わらず、破産手続きの開始決定と同時に終了せず、違う時期に終了するため、「異時廃止」となります。
同時廃止か異時廃止かは、裁判所が破産者の状況を判断して決めます。
財産がほとんどなく、免責の見込みがある場合は同時廃止、一定の財産がある場合や調査が必要な場合は異時廃止(管財事件)となります。
自己破産を検討している場合は、どちらの手続きになるかを見極めることが重要です。
借金の問題を解決する「債務整理」には「任意整理」「個人再生」といった方法がありますが、この記事では特に、「自己破産」における「異時廃止」について解説します。
同時廃止とは?
同時廃止とは、破産手続きの開始と同時に手続きを終了(廃止)することを指します。
同時廃止の特徴
- 破産手続きが簡単に終わる(資産がほとんどない場合)
- 破産管財人が選任されないため、手続きがスムーズ
- 費用が安く済む(裁判所費用が少ない)
- 比較的短期間(数ヶ月)で免責許可が下りる
同時廃止になる条件
- 財産(不動産・高額な預金・車など)がほとんどない
- 借金の原因がギャンブルや浪費ではない(免責不許可事由がない)
- 免責許可を受けるために特別な調査が不要である
管財事件とは?
管財事件とは、自己破産の手続きの一種で、裁判所が選任した「破産管財人」が、何を持っているのか、その財産を明らかにした上で、管理や処理を行う手続きです。破産者が持っている財産を整理し、債権者に適正に配分することを目的としています。
管財事件になるケース
自己破産には大きく「同時廃止事件」と「管財事件」の2種類があります。
管財事件となるのは、次のようなケースです。
- 一定額以上の財産(不動産や高額な預金など)がある場合
- 借金の原因に問題がある場合(ギャンブル・浪費など)
- 免責不許可事由がある場合(財産隠しなど)
財産が少なく、破産手続きと同時に事件を終了できる場合は「同時廃止事件」になりますが、財産があると「管財事件」として処理されます。
管財事件の流れ
1.裁判所へ自己破産の申立て
2.破産管財人の選任(裁判所が弁護士を指名)
3.財産や負債の調査(破産管財人が財産の状況を確認)
4.債権者集会の開催(財産をどのように処理するか決定)
5.免責許可の判断(免責が認められると借金がゼロになる)
管財事件では、破産管財人の調査が必要なため、手続きが長期間(3か月~半年以上)かかることが多いです。また、破産者は裁判所へ破産管財人への費用(最低20万円程度)を納める必要があります。
管財事件の注意点
- 財産を隠すと免責が認められない
- 破産管財人が財産の処分を行うため、自由に処分できなくなる
- 費用がかかるため、同時廃止事件で済むか弁護士に相談することが重要
管財事件になるかどうかは、個々の状況によって異なります。 自己破産を考えている方は、弁護士に相談し、最適な方法を選ぶことが大切です。
同時廃止と管財事件の違いと概要
項目 | 同時廃止 | 管財事件 |
破産管財人の選任 | なし | あり |
財産の処分 | なし | あり |
費用 | 数万円 | 20万円以上 |
期間 | 約3〜6ヶ月 | 約6ヶ月〜1年以上 |
免責のハードル | 比較的低い | 調査が必要 |
対象者 | 財産がほとんどない人 | 財産がある人・免責不許可事由がある人 |
異時廃止の基本的な定義
管財事件とは、自己破産手続きのうち、破産管財人が選任され、債務者の財産を調査・管理する手続きです。この中で、「異時廃止」という概念があり、破産手続きが進む中で特定の理由により終了することを指します。
異時廃止とは?
異時廃止とは、破産手続き開始後に、破産財団(債務者の財産)から債権者への配当ができないと判断された場合に、裁判所が破産手続きを終了させることを指します。つまり、手続きの途中で「破産財団の管理・換価を続けても配当が見込めない」と判断された場合に適用されます。
異時廃止の要件
裁判所が異時廃止を決定するには、以下のような状況が該当します。
- 破産財団に属する財産がほとんどない、または換価しても費用をまかなえない
- 配当できる財産がないため、破産手続きを続ける意味がない
- 管財人が調査を進めた結果、手続きを続けても債権者に分配する資産がないと判断された
異時廃止の影響
異時廃止が決定すると、破産手続きは終了しますが、免責手続き(借金の支払い義務を免除する手続)は別途進められるため、破産者の免責が認められる可能性はあります。ただし、裁判所の判断により免責が認められない場合もあるため、注意が必要です。
異時廃止は、破産手続きが進行する中で、財産が十分でないと判断された場合に手続きを打ち切る制度です。破産者にとっては、手続きが早く終わるメリットがあります。自己破産を考えている場合は、弁護士に相談し、手続きの流れを正しく理解することが重要です。
異時廃止が発生する主な条件
管財事件とは、自己破産の手続きのうち、裁判所が破産管財人を選任し、財産の調査や処分を行う手続きのことです。管財事件には、破産手続きの途中で「異時廃止(いじはいし)」となるケースがあります。異時廃止とは、破産手続き開始決定後に財産が不足し、破産手続きの続行が困難と判断された場合に、手続きを途中で終了することを指します。
1.破産管財人の調査により換価できる財産がないと判断された場合
破産手続きでは、破産者の財産を処分して債権者への配当に充てるのが基本です。しかし、破産管財人が調査を進めた結果、処分できる財産がほとんどないと判断されると、手続きを続ける意味がなくなります。その場合、裁判所は異時廃止の決定を行います。
2.予納金の不足により手続きが進められない場合
管財事件では、破産手続を進めるために予納金が必要です。しかし、破産者が予納金を支払えない場合、破産管財人の業務が継続できず、手続が途中で終了することがあります。
3.破産者が協力せず、手続きが進められない場合
破産者が財産の申告を怠ったり、裁判所や破産管財人の求める情報を提供しない場合、手続きの進行が困難になります。このような場合、手続きを継続することができないと判断され、異時廃止が決定されることがあります。
4.配当できる財産がないと判断された場合
破産管財人が財産の換価を進めたものの、換価後の金額が債権者への配当に十分でない場合も、異時廃止の対象となることがあります。例えば、処分可能な財産があっても、手続き費用を差し引いた結果、配当に回せる金額がほとんどゼロになる場合などです。
異時廃止が決定された場合の影響
異時廃止が決定されても、破産者の免責手続きには影響しないのが通常です。つまり、異時廃止となっても、裁判所が適切と判断すれば免責許可決定を受けることが可能です。
ただし、異時廃止の原因が破産者の不誠実な対応にある場合は、裁判所が免責不許可とする可能性もあるため注意が必要です。
異時廃止は、破産手続きの途中で財産が不足していることが判明し、手続きを続けることができなくなった場合に発生します。 異時廃止となっても、免責許可を受けられるケースがほとんどですが、破産者が誠実に手続きを進めることが重要です。
異時廃止が適用されるケースの増加傾向
管財事件とは、自己破産手続きの中でも、破産管財人が選任され、破産者の財産の管理や配当が行われる手続きです。この管財事件において、「異時廃止」が適用されるケースが増えている傾向があります。
異時廃止とは、破産手続きが開始された後、一定の財産があるものの、配当の必要がないと判断された場合に手続きを終了させる制度です。本来、破産管財人が債権者への配当を行う場合は「同時廃止」が適用されません。しかし、近年は債務者の財産状況や負債の特性を踏まえ、異時廃止が選択されるケースが増えているのです。
異時廃止が適用されるケースが増加している理由
1.少額資産の増加
破産者の資産が一定額以上あるが、換価・配当の手続きが複雑でコストがかかる場合、異時廃止が適用される傾向がある。
例えば、少額の預金や保険解約返戻金、給与未払分などがある場合。
2.破産管財人の負担軽減
破産管財人が関与する案件が増加する中で、事務処理の簡素化を図るため、異時廃止が活用されることがある。
一定の財産があっても、裁判所の判断で「配当の必要がない」とされた場合、異時廃止となる。
3.裁判所の運用の変化
裁判所の判断基準が柔軟になり、以前なら管財手続きが続いていたケースでも、異時廃止を適用するケースが増加。特に個人破産案件で、この傾向が見られる。
異時廃止が適用されるケースの具体例
- 破産者に一定の資産(50万円未満の預金など)があるが、債権者への配当が不要と判断された場合
- 会社員で退職金見込額があるものの、破産手続き上、分配が不要な場合
- 不動産を所有しているが、住宅ローン残高と評価額がほぼ同じで、換価・配当が行われないケース
異時廃止の適用が増えている背景には、裁判所の運用の変化や破産管財人の業務負担の軽減が関係しています。自己破産を検討している方にとっても、異時廃止が適用されれば手続きがスムーズになる可能性があります。具体的なケースについては、弁護士に相談することで最適な対応を検討することが重要です。
異時廃止の流れ
管財事件とは、自己破産手続きの一種で、裁判所が選任した破産管財人が、破産者の財産を管理・処分し、債権者への配当を行う手続きです。その中で「異時廃止(いじはいし)」とは、破産手続きの途中で配当が不要と判断され、破産手続きを終了することを指します。
1.破産手続き開始決定
裁判所が破産を認めると、破産管財人が選任され、破産者の財産を調査します。管財事件は、一定の財産がある場合や、免責不許可事由(不正な借入など)がある場合に適用されます。
2.破産管財人による財産調査
破産管財人は、破産者の預金、不動産、車などの資産を調査し、換価可能なものがあるか確認します。また、債権者への配当が可能かを検討します。
3.異時廃止の判断
調査の結果、配当に回せる財産がほとんどない、または手続きの費用をまかなうほどの資産がないと判断されると、破産管財人が裁判所に対し、異時廃止の申立を行います。
4.異時廃止決定
裁判所が異時廃止を認めると、破産手続きは終了します。ただし、免責許可決定が必要なため、破産者の借金がすぐにゼロになるわけではありません。
5.免責手続きへ
破産手続きが異時廃止で終了すると、免責手続きへと移行します。免責が認められると、破産者の借金は法的に免除されます。
異時廃止のポイントと注意点
- 異時廃止が認められると、破産手続きは終了するが、免責が確定するまでは借金の支払い義務が残る
- 財産が少なくても、裁判所の判断によっては異時廃止にならず、通常の破産手続きが続くこともある
- 破産者の協力が得られない場合や、手続きに問題がある場合は、異時廃止が認められない可能性がある
異時廃止は、破産者に大きな財産がない場合に適用されるケースが多いですが、免責の判断を受けるまで気を抜くことはできません。破産手続きや免責の流れについて不安がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
少額管財との関係と適用範囲
少額管財と異時廃止は、自己破産手続きにおいて密接な関係にあります。少額管財は、債務者の財産が少額である場合に適用される簡易な管財手続きです。一方、異時廃止は、破産手続開始決定後に財産がないと判明した場合に適用されます。
両者の適用範囲は、債務者の財産状況によって決まります。少額管財は、債務者に一定の財産があるものの、通常の管財手続きを行うほどではない場合に適用されます。具体的には、財産が数十万円から数百万円程度の場合が多いです。
一方、異時廃止は、破産手続開始決定後に債務者に配当すべき財産がないと判明した場合に適用されます。ただし、財産のなさが完全に明らかな場合は同時廃止となるため、異時廃止は少額の財産がある場合や財産の有無の調査に時間を要する場合に適用されることが多いです。
少額管財と異時廃止の境界線は明確ではありませんが、一般的に、財産が少額管財の基準を下回る場合や、財産の調査に時間がかかる場合に異時廃止が選択されます。ただし、裁判所の判断により、異時廃止から少額管財に切り替わることもあります。
まとめ
管財事件とは、自己破産の手続きの中で、破産管財人が財産の調査や債権者への配当などを行うケースを指します。この手続きには、一定の財産がある場合や、免責不許可事由がある場合などが該当します。
異時廃止(いじはいし)とは、破産手続開始後に「実際には処分可能な財産がない」と判断された場合に、破産手続きを途中で終了させることを意味します。通常、破産手続は破産管財人によって進められますが、調査の結果、配当に回せる財産が事実上ゼロになった場合に裁判所の決定で異時廃止となります。
異時廃止となる具体的なケース
- 破産手続き開始時には財産があると考えられたが、実際には処分可能な財産がなかった
- 破産管財人による調査の結果、差押えや配当ができる資産が見つからなかった
- 財産があったが、すでに処分されており、債権者に配当できる資金がなくなった
異時廃止後の流れ
1.破産手続が終了(債権者への配当がないため、事実上の手続き終了)
2.免責審査へ移行(免責許可を受けるための審査が行われる)
3.免責決定の取得(裁判所の判断により、免責が許可される)
異時廃止となった場合でも、免責が認められれば、借金は免除されます。ただし、破産手続の中で免責不許可事由(浪費やギャンブルによる借金など)がある場合は、免責が認められない可能性もあります。
異時廃止に該当するかどうか、また免責が認められるかは、専門的な知識や意見が必要となるため、弁護士に相談することが重要です。自己破産を検討している場合は、早めに法律の専門家に相談し、適切な対応を取ることをおすすめします。まずはお気軽にご相談ください。